関連本など
雑感・感想
疾風怒涛の幕末、時代の変革をめざして東奔西走しながら、三二歳、志半ばで暗殺された坂本龍馬。勝海舟、西郷隆盛、木戸孝允、松平春嶽らとの政局をめぐる交渉の中で、龍馬はどのように行動したのか。また、巨艦を持つことを夢見た海援隊の実態はどうだったのか。龍馬の書簡等基本史料を丁寧に読み解きながら、その実像に迫る。
近年までに数おおく出された龍馬伝記の集大成的な新書。文庫・新書といった同型書籍のなかでは、龍馬伝記として随一の完成度をほこるかと思います。坂本龍馬の人生を"歴史的流れにそってつかむ入門書"としてもオススメできますし、最新の龍馬論を大概ながらつかむという点でまた簡潔・明快。「あとがき」によると、新書におさめる過程でなくなく削った部分も多いようですが、詰めこみの観も、逆に削りすぎの観も特にありません。私的には新書として、かなり好バランスの分量かと存じます。
また上記の点以外で印象的なのは、史料の勘所にたいする読解の説明が丁寧なこと、時点々々における人物ごとの政治的立ち位置が重視されていること、行動・発言・出来事の歴史的に整序された把握などに、正直「脱帽」の感をおぼえます。
副読本として松浦玲『検証・龍馬伝説』・『横井小楠と松平春嶽 幕末維新の個性(2)』あたりなんかをあわせ読むと、理解の幅がひろがるかも知れません。
岩波書店:2008年11月20日 発行:740円(税抜)
(平成二一年一月八日識)